昭和レトロをテーマにした販促例と消費者動向について

Posted by Junji Kanazawa on 2022/03/31 10:32:19

 ここ数年、Z世代と呼ばれる25歳以下の若者がけん引役となり、『昭和レトロブーム』が続いています。

 『写ルンです』や『昭和歌謡』のリバイバル、『西武園ゆうえんち』のリニューアル以外にも食やファッション、インテリアなど様々な分野で『昭和レトロ』がブームとなっています。

 『レトロ文具付録』をシリーズ展開する宝島社が2021年6月に実施した調査で「レトロなものに興味があるか」尋ねたところ、実に63%の女性が『興味がある』と回答しています。また、2021年6月発売分をもって、『レトロ文具付録』がシリーズ累計100万部を突破したとのことです。

 現在の『昭和レトロブーム』は昭和(1927年12月25日~1989年1月7日)のどの時期にあたるのでしょうか?少し考えてみました。一般的には、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』に見られるような『昭和ノスタルジー』が感じられる1960年代ころから1980年代のバルブ期を経て1990年代まで(昭和30年~平成11年)の期間が現在の『昭和レトロブーム』の時期にあたるといわれています。

 平成にかかっていることから『昭和・平成レトロブーム』とも言えるかもしれません。

 

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 昭和生まれの私としては、昭和がブームになることはうれしくもあり、ただ、『レトロ=古き良きものを懐かしみ愛好する』と聞くと、気恥ずかしさもあります。ブームが続いているなか、『昭和レトロ』をテーマにした販促案の概要を幾つか紹介します。

 併せて、『昭和レトロブーム』の期間に当時どのような出来事があったのか、また何が流行っていたのか、さらに今、ブームになっている現象やその理由・背景等をカンタンにまとめてみました。

 販促担当者様はもとより、衣食住に関係するメーカーの小売担当者様や販促担当者様にご一読いただけたら幸いです。

※宝島社の調査結果はコチラ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001194.000005069.html


1:昭和レトロ関連商材拡販に向けた販促案概要

 『昭和レトロブーム』のなか、当時の出来事や流行、時代背景等も考慮して、令和の時代にも通用する販促案の概要を列挙させていただきます。

【食品関連】

1:『メニュー・レシピ提案』企画

 栄養バランスがよく、理想的といわれている『1980年代の食事』のメニュー・レシピ提案。
特に、当時よく食べられ、生活習慣病の予防効果が期待できるにも関わらず、食卓に登場する頻度が減っている『魚料理』に関するメニュー・レシピ提案を中心に展開。

→『魚料理』は「生活習慣病の予防効果があること」をPOP等に表示。
→売場横断型での対応として、関連食材を一堂に集めた専用コーナーを設置。実店舗の強みを生かして『1980年代メニュー』をリアルに再現して提示。

2:『街ブラ提案』企画

 肥満や生活習慣病に悩む現代人向けに『1980年代の食事のメニュー・レシピ提案』と連動して「ちょっとした運動をしながら健康になる」をテーマに『街歩き(街ブラ)』を提案する企画。純喫茶や銭湯など昭和を感じられる施設を落とし込んだマップと所要時間を記したリーフレットを作成・配付して『街歩き(街ブラ)』を楽しんでいただく。

3:『消費者参加型』企画《キャンペーン型》

 昭和の時代によく食べられていた『魚料理』にフォーカスした企画。
「自慢の魚料理の写真とレシピ」をSNSに投稿していただく「#タグキャンペーン」を実施。応募投稿の中から優秀者を決めて、魚に関連するグッズ等をプレゼント。
→高級寿司店の食事券、水族館入場券、魚の骨抜きが簡単にできるグッズ…等

4:『昭和テイストを意識した』企画

 昭和と聞いて多くの人が思い浮かべる『駄菓子』や『昭和生まれのロングセラー商品』を特集する企画。専用コーナーを設けて昭和を感じられる売場演出で展開。

【飲食店関連】


『消費者参加型』企画《総選挙型》

 昭和の時代に外食でよく食べられていたメニューの中で復活してほしいメニューを投票していただく『総選挙型』の企画。店舗誘引を目的にレジ横に『投票箱』を設置するほか、多くの人に投票してもらうために、HPやアプリからも投票できるようにする。また、上位に選ばれたメニューはその当時のレシピを忠実に再現して提供。

【ファッション関連】

1:『コーディネート提案』企画

 ファッションアドバイザイーが古さやダサさを感じさせないために、当時流行ったファッションに今風のエッセンスを加えて、トータルにコーディネートして提案する企画。

2:『Y2Kファッション』企画

 Z世代を中心にリバイバルヒットしている『Y2Kファッション(1990年代~2000年代)』をトータルにコーディネートした提案とルーズソックスや厚底ブーツなど当時流行ったアイテムの単品訴求をあわせて実施。また、ファッションアドバイザーが当時の着こなしを指南。さらに、当時、女子高生だった母親とZ世代である娘をターゲットに親子で着られる『母娘コーデ』も提案。

3:『展示型』企画

 昭和にあった出来事をパネルで振り返るとともに、当時、流行っていたファッションを
年代別・傾向別にトータルにコーディネートして実物展示。
→1960年代(ミニスカート、IVYルック、モッズ系など)、1970年代(ヒッピー、ニュートラ、ベルボトムなど)、1980年代(ハマトラ、カラス族、ボディコンなど)、1990年代(裏原、女子高生、ヒップホップなど)

4:『消費者参加型』企画《応募型》

 昭和を実際に経験した50代以上のシニア層をターゲットに、当時着ていた服装と服装にまつわるエピソードを募集する企画。優秀作品は、店舗・HP上に掲示。

【インテリア・雑貨 他】

1:『昭和レトロ提案型』企画

 家具・インテリア専門店で『昭和レトロ』が感じられるタンスや鏡台などの木製家具を配した部屋を再現して、その部屋にマッチする現在人気のインテリアや最新家電、雑貨なども配置して『昭和+令和』をミックスした部屋作りを提案する企画。

2:『プレゼント』企画

 「昭和の暮らし」を体感してもらうために、「山の駅 昭和の学校(岩手県)」や「高山昭和館(岐阜県)」などの昭和をテーマにした記念館の入場券と乗車券、宿泊券をセットにしたプレゼント企画を実施。

3:『展示型』企画

 50代以上のシニア層をターゲットに、当時の出来事を懐かしく思い出していただくために
TV番組(サンドイッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん など)でも特集が組まれて話題の昭和家電を中心に玩具や文房具、食器、雑貨などを時系列に展示する企画。



2:『昭和レトロブーム』再燃の理由とけん引役は…?

 『昭和レトロブーム』をけん引しているのは、Z世代と呼ばれる若い世代の人たち。
では、Z世代にはどんな特徴があるのでしょうか?

 一般的にZ世代とは1996年ごろから2010年ごろにかけて生まれた人たち、2021年時点の年齢で言うと、25歳~11歳を指しています。

 その前の世代である『ミレニアム世代(26歳~41歳)』は最初に手にしたコミュニケーションツールはガラケーであり、デジタル環境・デバイスが徐々に普及していく過渡期に育っていたのに対して、『Z世代(11歳~25歳)』は生まれた時からすでにインターネットが身近にあったことはもちろんのこと、最初からガラケーではなく、スマートフォンを手にし、SNSを当たり前のように使いこなしている世代です。

 よって『ミレニアム世代』が『デジタルパイオニア』と呼ばれているのに対して、Z世代は『ソーシャルネイティブ』や『スマホネイティブ』と呼ばれています。

 スマホを使えば、必要な情報が簡単に手に入り、知り合いとのコミュニケーションも容易で、その他の技術の進歩もあり、生活するうえで不便を感じた経験が少ないと思われるZ世代がなぜ、決して便利とは言えなかった昭和の時代に惹かれるのでしょうか?

 惹かれる理由としては『エモさ』と『不完全さ=手間』、『身近=抵抗のなさ』の三つが考えられます。

●エモい
2018年から若い世代を中心に今の心情を表す言葉として使われている「エモい」というワード、どういった意味なのでしょうか?「エモい」とは「感情が揺さぶられ、なんとも言い表せない気持ちになること」。

 映画『ALWAYS 三丁目の夕日』に見られるような昭和の原風景に対して『ノスタルジー(郷愁)』を感じ、切なさや懐かしさ、感動的など様々な心情が入り混じるなか、そのさまざまな心情を一言でまとめて『エモい』と表現しています。

 『昭和レトロ』をテーマにした販促施策を考えるうえで、『エモい』と感じてもらえるかどうかがポイントのひとつとなりそうですね。

エモい


●不便さ=手間

 『スマホ』があれば、カンタンに高画質な写真がとれ、加工もできる、また、ストリーミング配信により、音楽や動画も自由に視聴できる環境下にあるなか、なぜ、『写ルンです』などのフィルムカメラやレコード、カセットテープに惹かれる若者が多いのでしょうか?

 例えば、『写ルンです』などのフィルムカメラは画質が粗く、撮影までの手間もかかり、撮り直しが出来ず、現像までの時間もかかり、かつ現像してみないとどのように撮れているかわからないなどスマートフォンやデジタルカメラに比べて機能面では格段に劣っています。

 昭和の時代に比べて、技術が格段に進歩した影響で生活するうえで不便を感じることが少ないなか、逆に不便で手間がかかることが新鮮に受け止められ、興味を惹きつけているようです。
画質の粗さが若い世代にとっては、『いい味をだしている=エモい』と感じられ、また、手間や時間がかかることが『経験したことのない楽しさ』として捉えられています。

 同様にレコードやカセットテープで聴く音も、『デジタルにはない温かみ=エモい』と受け止められています。
昭和世代の私としては、『写ルンです』が発売された当初、カメラが使い捨て出来ることに衝撃を受け、また、ラジオから流れる音楽を息を潜めてカセットテープに録音していたことが懐かしく思い出されます。

●身近=抵抗のなさ

 Z世代の親は昭和生まれが多くを占めています。

 特に母娘は、一緒に買い物や旅行に出掛けたり、服を共有するなど『仲がいいこと』でも知られています。
母親の学生時代の話を日頃から聞いていたり、カラオケを一緒に行ったときに母親が歌う当時流行した曲などを聴いていたことなどから、昭和に対してある程度のイメージが出来上がっていたと考えられます。

 よって昭和に対して『身近=抵抗がない』ものとして捉えられていることもブームの背景にあるようです。
最近、1990年代~2000年代にかけて流行したファッションが『Y2Kファッション』として、Z世代を中心にリバイバルヒットしているのも当時、女子高生だった母親の影響が大きいと言われています。

 『昭和レトロ』をテーマにした販促施策を考えるうえで、『母娘』両方に受けるかどうかもポイントのひとつとなりそうですね。

 今、ブームのけん引役は昭和の時代を経験したことのない若い世代が中心ですが、実際に昭和を生きた50歳以上のシニア層に対しても『昭和』を切り口として提案すれば、『ノスタルジー(郷愁)』を感じ、その当時の商品や流行に思いを馳せることは間違いありません。

 また、団塊世代の全員が2025年には75歳以上の後期高齢者になることから、昭和にあったモノや音楽に実際に触れて当時のことを懐かしく思い出し、語りあっていただく心理療法のひとつである回想法による『認知症予防』への取り組みも始まっています。

『シニア』に受ける販促施策を考えることも重要なポイントの一つになりそうです。

※『Z世代』に関して参考にした記事はコチラ
https://sdgs.kodansha.co.jp/news/knowledge/39069/ 


※『写ルンです』に関して参考にした記事はコチラ
https://xico.media/columns/film_camera_photo_advice/ 


3:当時の出来事は?何が流行っていたの?

 『昭和』をテーマにした販促施策を考えるうえで『当時、どういった出来事があったか?』また『何が流行っていたか?』などの時代背景を把握することも重要な要素です。

 さらに、現在、『リバイバルヒットしているもの』や『昭和と聞いてイメージするもの』も併せて把握することで新たなヒットの芽を見つけることに繋がっていくでしょう。

 そこで『昭和レトロ』としてブームになっている『昭和35年~平成11年=1960年~1999年』にあったおもな出来事を年代別に振り返っていきます。

●1960年(昭和35年)~1999年(平成11年)にかけての出来事

《1960年代(昭和35年~昭和44年)の主な出来事》

 60年代は安保闘争など学生運動が盛んだったことと高度経済成長が続き、GNPでアメリカに次いで世界第2位の経済大国にまで発展した時代です。国民の生活がどんどん豊かになっていった影響で50年代後半に消費者の憧れだった『3種の神器(白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫)』が60年代に入ると多くの家庭で普及していきました。60年半ばになると『3C(カー・クーラー・カラーテレビ)』をもつことが国民の新たな夢となりました。

 その他のおもな出来事を見てみると、60年にカラーテレビの本放送が開始され、64年の10月10日から東京オリンピックが開催され、その直前の同月1日に東海道新幹線が開業し、東京―新大阪間が4時間で結ばれました。また、東名高速道路は69年5月に全線開通し、同年の1月には東大安田講堂事件が起こり、その後、学生運動は沈静化していきました。

《1970年代(昭和45年~昭和54年)の主な出来事》

 70年に大阪で万国博覧会が開催。銀座で日本初の歩行者天国が実施された年でもあります。翌71年は日本マクドナルドの1号店のオープンやカップヌードルが発売されるなどその後50年以上の長きにわたって愛されるロングセラー商品が数多く生まれた年となりました。。72年は札幌で冬季オリンピックが開催され、ジャンプ競技で日本人が表彰台を独占し、日本中が歓喜に湧きました。73年には第1次オイルショックがあり、トイレットペーパーなどの買い占め騒動の様子がメディアでも連日、取り上げられました。その影響で翌74年は「狂乱物価」と呼ばれたインフレがおき、戦後初の経済成長がマイナスに。同年の5月にはセブンイレブンが豊洲に日本1号店をオープンしました。75年4月には20年近く続いたベトナム戦争が終結。78年5月に地元住民による反対運動が続くなか、新東京国際空港(現=成田国際空港)が開港しました。

《1980年代(昭和55年~昭和64年・平成元年)の主な出来事》

 80年代は女子大生がブームになった時代です。80年に始まった『週刊朝日』の女子大生表紙シリーズ(宮崎美子)や81年にスタートした文化放送の『ミスDJリクエストパレード』(川島なおみ、斉藤慶子など)、83年にはフジテレビで『オールナイトフジ』がスタートしてブームは頂点に達しました。

また、86年から施行された男女雇用機会均等法により、女性の本格的な社会進出へのきっかけとなった時代でもあります。

 その他の出来事では、83年に東京ディズニーランドのオープンや任天堂からファミコンが発売されるなどアミューズメント関連の話題が多い年に。翌84年にはマハラジャ(麻布)がオープンしてディスコがブームとなり、「ワンレン・ボディコン」で踊る女性に注目が集まりました。同年12月からはバブル景気に突入して、バブルが崩壊する91年3月まで約6年にわたって、日本中が好景気に沸きました。また、89年1月に昭和天皇が崩御され、60年以上の長きに渡って続いた激動の昭和の時代は終焉し、時代は『平成』に。消費税(3%)がスタートした年でもあります。

《1990年代(昭和55年~昭和64年・平成元年)の主な出来事》

 80年代の女子大生ブームに対して、90年代は女子高生ブームが起きました。安室奈美恵のファッションを真似た「アムラー」や顔を黒く塗る「ガングロ」などギャル文化が次々と生まれ、空前の「コギャルブーム」に。そのブームの担い手である女子高生に関心が集まりました。

 また、コミュニケーション手段の主役がポケベルから携帯電話に移行した結果、趣味・嗜好の合う友達と繋がることが容易となりました。そのことも女子高生ブームの下地になっていたのかもしれませんね。

 その他のおもな出来事では、91年2月にバブル景気が崩壊し、その影響とアジアの通貨危機なども相まって、97年~翌98年にかけて北海道拓殖銀行や山一証券などの大手金融機関が相次いで破綻し、金融危機の様相を呈しました。

 92年に学校5日制がスタート。93年にはJリーグが開幕して「サッカー」への関心が高まりました。95年は阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件といった未曽有の災害・事件が起き、97年には消費税が3%から5%に引き上げられました。

《昭和と聞いて思い浮かべることは?》

 繊維月報(2020年10月号)』のなかで「昭和ぽいっと聞いて何を浮かべますか」を聞いたところ、「白黒(テレビ、写真)」が最も多く、12票。『レコード/黒電話(ともに11票)』『駄菓子(屋)/ちゃぶ台(ともに10票)』『歌謡曲(昭和歌謡):7票・演歌:6票』などが上位にきています。

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『昭和=ちゃぶ台』のイメージがあるのは、当時放送されていた人気アニメの『巨人の星』のなかで、星一徹(父)が食事中、怒って『ちゃぶ台をひっくり返す』シーンの影響かもしれません。余談ですが、1968年3月30日から1971年9月18日まで3年半にもわたって放映されていたにも関わらず、『ちゃぶ台返し』のシーンは2回しかなかったとのことです。
『昭和の頑固おやじ』を表す象徴的なシーンとしてのちに引用して使われる表現だったため、人々の心に強く印象付けられたようですね。

※繊維月報の記事はコチラ
https://www.itochu.co.jp/ja/business/textile/geppo/202010/geppo_vol726.pdf 


4:食事やファッション、インテリアはどうだったの?

 また、昭和に流行した商品や今、再注目を浴びている商品などを『食関連』『ファッション関連』『インテリア関連』に分けて見ていきましょう。

●食の分野

 昭和の食卓ではどのような料理が提供されていたのでしょうか?
高度経済成長期が始まった1960年代と高度経済成長が終わり安定成長に入った1980年代、食に関する社会問題が増えた2010年代と食卓の変化を時系列に見ていきましょう。

《1960年=昭和35年ごろ》

 高度経済成長が始まるも、多くの国民はまだ、貧しさを感じていた時代。食事もささやかなおかずを塩分多めの漬物などと一緒に空腹を満たすためにごはん(お米)を丼でたっぷり食べるのが一般的でした。
結果、炭水化物を多く摂取しているも、脂質・たんぱく質の摂取が少ない栄養バランスの悪い食生活でした。ただ、夕食時は家族全員が食卓を囲んで今日あった出来事を話すなど『家族団らん』があった時代です。『決して暮らしは豊かではなかったけれども、家族の深いつながりがあった時代』といえるでしょう。

 現在、家族個々の生活時間が異なってきている影響もあり、ばらばらに『一人で食べる=孤食』は当時、ほとんどなかったようですね。その後、高度経済成長に伴い、人々の暮らしが豊かになるとともに、欧米の様々な文化が日本に入ってきて、食の分野でも欧米の影響を色濃く受けていくこととなります。

《1980年=昭和55年ごろ》


 適度に欧米の食文化を取り入れた『昭和50年代』の食事は栄養バランスで見ると、理想的と言われています。ごはんと味噌汁をベースに、主菜は魚料理を中心(たまに肉料理)に乳製品やデザートなどを程よく取り入れていました。多くの人が豊かになった関係で空腹を満たすためにごはんを多くとる必要がなくなったため、炭水化物の摂取量が減少し、60年当時と比べて主菜もよくなり、デザートなども食するようになった影響で栄養バランスのとれた理想的な食事になりました。

《2012年=平成24年ごろ》

 このころになると、食の欧米化がさらに進み、今まで日本人の食卓風景の主役だった『ごはんと味噌汁』という組み合わせが必須ではなくなり、『主食(ごはん)より主菜(おかず)』をメインと考える人が増えてきました。ダイエットや健康目的でごはんを減らす(抜く)人が増え、さらに主菜も魚より肉料理を好む人が増えた影響で、炭水化物の摂取量は減るも脂質の摂取量が増えて、エネルギー過多の欧米型の食生活となりました。その結果、肥満や生活習慣病で悩む人が増えました。

 また、同じ食卓についた家族が『それぞれ別のメニューをとる=個食』が進んでいったことも栄養バランスの悪い食事の一因となっているようです。食関連では、『健康』をテーマに栄養バランスがとれた『1980年代』のメニューを再現する企画などが求められますね。

《昭和の外食シーンは?》

 昭和の食を語る上で欠かせないのが当時の喫茶店やデパートの食堂、町の洋食屋さんで出されていた西洋の食文化の影響を強く受けて当時「ハイカラ」と言われたメニューの数々。現在では、スターバックスやドトールなどカフェチェーンが隆盛を極めるなか、いまでも昭和の雰囲気が漂い、昭和テイストの食やドリンクを提供する『純喫茶』や『洋食屋さん』も大幅に減ったとはいえ、いまだ残っています。

昭和レトロ

 特に、『純喫茶』はレトロの雰囲気と今では見かけなくなったメニューがどこか懐かしく「エモい」と受け止められ、若い世代を中心にブームとなっています。

 有名なところでは六本木での待ち合わせ場所としても知られ、1946年創業してから75年以上の長きに渡って愛されて続けている『アマンド』。2017年の創業70周年を迎えた際、先に進むのではなく「あえて昔に戻ろう」をテーマに、「アマンド昭和パーラー」「アマンド昭和食堂」と称して昭和テイストのデザートや料理を今でも提供しています。新奇性のあるメニュー開発や台湾・韓国発スイーツなどのトレンドに捉われることなく、古き良き昭和の食文化を次世代に残そうとしている企業姿勢は好感が持てますね、

 では、昭和の外食文化を代表する『フード』『ドリンク』『デザート』も純喫茶のメニューに沿って見ていきましょう。

《フード》

⇒オムライス、スパゲティナポリタン、ハヤシライス、ホワイトグラタン…

 今でも食べられているメニューが多いですね。ただ、オムライスのように卵は今のように「ふわふわ」ではなく「しっかり」、トマトケッチャプ味のチキンライスを包むなど調理法やレシピが変わっているメニューもあります。
また『スパゲティ』のように『パスタ』と呼び方が変わっているメニューもあります。

 因みに、イタリア語で小麦粉を練って製造した食物の総称が「パスタ」。その中で細長く棒状のものを『スパゲティ』と呼ぶそうです。スパゲティはパスタの一種だったのですね。

《ドリンク・デザート》

⇒ドリンク:クリームソーダ、コーヒーフロート、レモンスカッシュ、レモネード、ミルクセーキ…
⇒デザート:プリンアラモード、フルーツポンチ、ホットケーキ、プリン、ソフトクリーム…

 ドリンクやデザートはカフェなどであまり見かけなくなったメニューが多い印象を受けます。
子どものころ、牛乳に卵や砂糖などを加えて作る『ミルクセーキ』が大好きでした。いつの頃からか、飲食店で見かけることがなくなり、寂しい思いをしていました。昭和レトロブームに乗って、「ミルクセーキ」も流行してほしいところです。厚めの甘い生地にはちみつやバターをかけて食べる『ホットケーキ』も昭和の味ですね。子どもの頃、おやつでよく食べていた記憶があります。

 今ではホットケーキより薄めに焼いて甘くない生地にフルーツや生クリームなど様々なトッピングで見た目にも楽しめる『パンケーキ』が一般的ですよね。数時間待ちの行列ができる『パンケーキ専門店』も少し見なくなりまたが、テレビ等のメディアでもその様子がよく取り上げられていましたね。

●ファッションの分野

 ファッションはリバイバルヒットが多くみられる分野です。

 2017年~2018年にかけて『1980年代ファッション』、2020年に入ると『1990年代~2000年代にかけて流行ったファッション』を『Y2Kファッション』と呼び、当時流行ったへそ出しや厚底ブーツなどがZ世代を中心にリバイバルヒットしています。

 特に90年代に女子高生の間で爆発的に流行したルーズソックスも2021年に入ってから人気が再燃しており、インスタグラムに#ルーズソックスの投稿が27,000件もあったとニュース番組でも取り上げられていました。

 1960年代~1990年代にかえて当時、流行したファッションを年代別に見ていきながら、令和の時代の今、リバイバルヒットしうるファッション・商品が『Y2Kファッション』以外にもあるかどうか見ていきましょう。

【1960年代(昭和35年~昭和44年)のファッション】

 音楽シーンはザ・ビートルズの人気が沸騰しているなか、66年に来日して日本武道館でコンサートを開催しました。その影響を受けて、ロンドン発祥のモッズ系のファッションがブームとなりました。
また、ミニの女王と言われた「ツイッギー」が67年に来日し、女性の間でミニスカートが大ヒットするなど欧米人タレントがファッションに大きな影響を及ぼした時代でした。
さらに「みゆき族(銀座・みゆき通り)」や「六本木族」「原宿族」など繁華街によって、遊びに来る人のファッションの傾向が違っていた時代でもあります。

《代表的なファッションとその特徴》

・ミニスカート →ひざ丈5センチでシルエットはAラインが主流。
・IVYルック →アメリカの大学生の上品なカジュアルスタイル。石津謙介氏が創業した『VAN』が有名。
・パンタロン →着心地が楽でシルエットが太目(ふとめ)で裾が広がったパンツ。
・モッズ系 →ロンドンのカルチャーシーンで若者の自己表現として生まれたスタイル。

【1970年代(昭和45年~昭和54年)のファッション】

 女性ファッション誌の創刊が相次ぎ、(70年:『an・an』、71年:『non・no』、75年:『JJ』)ファッション雑誌やガイドブックを片手に一人旅や少人数での旅行をする若い女性を「アンノン族」と呼び、社会現象となりました。パルコやマルイなどのファッション系の小売店の出店も相次ぐなど、ファッションが盛り上がりを見せた時代です。

 ベトナム戦争への反戦ムードの高まりを受けて浮かれたファッションを否定し、一見むさくるしくも見える『ヒッピー』が一大ブームとなり、60年代のミニスカートブームの反動と時代の気分を反映して、マキシ丈のスカートなどを着こなし、民族衣装から着想を得て素朴な感じの『フォークロア(ボヘミアン)』も流行しました。
女性のジーンズ着用や男性の長髪などユニセックスファッションが流行したのもこの年代がはじめてです。

《代表的なファッションとその特徴》

・ヒッピー →リペアされたデニムのベルボトムなどナチュラルで野性味のあるスタイル。
・ニュートラ →金ボタンのジャケットとミニスカートの組み合わせに高級ブランドのバッグなどの服飾小物を取り入れた華やかで清潔感のあるスタイル。
・フォークロア《ボヘミアン》 →世界各国の民族衣装がモチーフでマキシ丈のスカートや刺繡入りブラウスなどを着こなす。
・ベルボトム →裾にかけて広がるシルエットのパンツ。
・パンク →鋲(びょう)を打ったレザージャケットなどパンクロックバンドが愛用したスタイル。

【1980年代(昭和55年~平成元年)のファッション】

 バブル景気の影響を受けてブランド志向が高まりました。また、川久保玲や山本耀司といった日本人デザイナーが「黒の衝撃」をモード界に与えたことで、国内でも黒やモノトーンが流行し、全身黒づくめの「カラス族」と呼ばれるファッションが流行しました。

 ブランド志向の高まりと日本人デザイナーのパリでの活躍等の影響をうけて、多くのDCブランドが誕生しました。また、ディスコのお立ち台で踊る女性のファッションである「ワンレン・ボディコン」にも注目が集まりました。
さらに、女子大生ブームを背景に、女子大生向けファッション誌が相次いで創刊されました。(82年『CanCam』『Olive』、83年『Vivi』、88年『Ray』)

 88年ころには、シンプルで飽きのこない定番アイテムを品よく着こなす『渋カジ』が山手線沿線の高校生を中心に流行し、トレンドの中心が『女子大生~女子高生』に移っていくきっかけとなりました。

《代表的なファッションとその特徴》

・ジャパニーズ・プレッピー →スクールウェアをルーツとするスタイリング。
・ハマトラ →女性らしく清楚な雰囲気にまとめたお嬢さん風スタイル。
・カラス族 →全身を黒でまとめたファッション。
・ボディコン →官能的で女性らしいスタイル。
・オリーブ少女 →雑誌Oliveが提案したガーリーでロマンチックなスタイル。

 1980年代に大学時代を過ごした私のファッションはボタンダウンシャツにチノパン、ローファーを組み合わせた『ジャパニーズ・プレッピー』な雰囲気だったことが思い出されます。

【1990年代(平成2年~平成11年)のファッション】

 安室奈美恵のファッションの影響を受け「コギャル」がブームとなり、その担い手の中心だった女子高生のファッションに注目が集まりました。茶髪のロングヘアーと焼けた肌にへそ出しルックやタイトなミニスカートを着こなし、制服ではミニスカートとルーズソックスの組み合わせがお決まりのスタイルでした。
『裏原』や『グランジ・ロック』のように古着をファッションにうまく取り入れるなど古着を着ることに抵抗がない人が増えた時代でもあります。

 また、70年代のアフロアメリカン音楽である『ヒップホップ』やバンド「ニルヴァーナ」のファッションに影響を受けた『グランジ・ロック』など音楽がルーツのファッションが流行ったのもこの時代の特徴です。

《代表的なファッションとその特徴》

・裏原 →古着×モード系を合わせるなどミクスチャースタイル。
・女子高生 →制服ではミニスカートとルーズソックスの組み合わせが定番。
・ヒップホップ →オーバーサイズの服やパンツの腰ばき、キャップなど。
・グランジ・ロック →バンド「ニルヴァーナ」に影響を受けたファッション。
・フレンチカジュアル →きれいめカジュアルをベースにフランスブランドを取り交ぜたスタイル。

ファッションは当時流行った着こなしやアイテムをそのまま提案するのではなく、今の時代背景等も考えて『加減する』ことが重要となりそうですね。

インテリアの分野

 あたたかさやちょっとあか抜けない素朴な雰囲気が老若男女問わず多くの人をノスタルジック(郷愁)な気分に誘う『昭和インテリア』。その魅力や特徴を見ていきましょう。

 戦後、欧米の文化が日本に急速に入ってきた影響を受けて一般家庭でも畳の部屋にソファやベッドを置く、狭い台所に不似合いなダイニングセットが配置されるなど、どこか違和感があり、ちょっと『ミスマッチな和洋折衷の空間』が若い世代にとっては逆に新鮮に感じられているようです。

 また、昭和をイメージするものとして上位に入った『ちゃぶ台』からも連想できるように木のやさしさが感じられ、素朴なデザインの『木製家具』が畳やふすまの部屋と相まって、どこかほっとする心休まる空気感を醸し出しているとして人気となっています。

 『昭和レトロ』というテーマで家具・インテリアに関する販促施策を考えるうえで『空間をプロデュースする』という視点にたち、家具・インテリアだけでなく、当時の生活に彩りを加えた家電や食器類などの雑貨、文房具、玩具などに関しての理解も深めることでより一層、説得力のある施策立案に繋がります。

 『純喫茶』はレトロな雰囲気に、今では珍しくなったメニューを頼めば、タイムスリップした感覚になり、非日常を体験できると若い世代の間で人気が続いています。

 浅草や上野、新宿などの繁華街には今も『純喫茶』が残っています。街ブラをしながら、目についた『純喫茶』に入って、実際にその世界観を楽しんでみることをおススメします。

 また、昭和30年代は家にお風呂があるお宅が珍しかったため、多くの人が利用した『銭湯』。その後、お風呂がほとんどの家に普及し、その影響で多くの銭湯は廃業しました。ただ、今も『帝国湯(東日暮里)』や『稲荷湯(滝野川)』のように昔ながらのレトロな雰囲気を漂わす銭湯が都内にはいくつか残っています。

 10代の間ではサウナブームも相まって『銭湯に行く』ことが密かなブームになっているという話も聞きます。たまには、銭湯の広い浴室に浸って昭和に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

 また、50代以上の世代の人にとっては、当時(1970年代)の流行歌であるかぐや姫の『神田川』の世界感を再現してみるのもありですね。全国にある『昭和』をテーマにした記念館を訪れることもおススメします。

 各記念館とも趣向を凝らした展示を心掛けており、さらに『部屋・台所の様子など→昭和日常博物館(愛知県)』や『文房具・居酒屋などの様子→江戸東京たてもの園(東京都台東区)』、『駄菓子屋や電気店などの店舗→山の駅 昭和の学校(岩手県)』、『昭和の街並み→高山昭和館(岐阜県)』などテーマを絞って再現することで記念館としてのオリジナリティを出しています。

 また、昭和の熱気を感じながら遊びつくせる『西武園ゆうえんち』や日本最初の遊園地であり、昭和の乗り物がいまだ体感できる『浅草花やしき』、映画『男はつらいよ』の世界観を通して昭和の暮らしを体験できる『葛飾柴又寅さん記念館/山田洋二ミュージアム』、夕方の昭和の下町の空気感のなかで全国各地のラーメンが堪能できる『新横浜ラーメン博物館』などもおススメです。

 販促施策を考える前に、昭和を感じられる純喫茶や銭湯、記念館などに実際に足を運んでみてください。体感することで何らかのヒントが得られることでしょう。


※食で参考にした記事はコチラ
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100014/092000001/?P=3
https://kurashinista.jp/column/detail/2938
http://www.roppongi-almond.jp/

※ファッションで参考にした記事はコチラ
https://woman.mynavi.jp/article/190227-7/
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00791/

※インテリア関連で参考にした記事はコチラ
https://www.sofastyle.jp/media/basis/knowledge/52434
https://www.jalan.net/news/article/595047/
https://kinarino.jp/cat8-%E6%97%85%E8%A1%8C%E3%83%BB%E3%81%8A%E5%87%BA%E3%81%8B%E3%81%91/39330-%E6%98%AD%E5%92%8C%E3%83%AC%E3%83%88%E3%83%AD%E3%81%AA%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%92%E5%B7%A1%E3%82%8B1%E6%97%A5%E3%81%AF%E3%81%84%E3%81%8B%E3%81%8C%EF%BC%9F%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%97%E3%81%AA%E6%97%85%E3%81%B8%E3%81%94%E6%A1%88%E5%86%85

 

5:さいごに

 『昭和レトロ』を切り口とした販促施策を考える際、当時の出来事など時代背景を把握することが重要となります。
なぜなら、その商品がヒットした理由が見えてくるからです。当時、流行ったものをリバイバルするかどうか考えるうえで、ヒットした商品の時代背景等が令和の今との共通項があるかどうかを冷静に見極めることが必要となります。

 また、その商品に『エモさ』や『手間がかかり、不便だけど楽しい』と感じられる要素があるかどうか、ターゲットが未成年の場合は『親がすすめる』要素があるかどうかも見極めたいところです。さらに、昭和レトロのブームの背景には、当時の街なかや店の様子、部屋の雰囲気等に対して『ノスタルジー(郷愁)を感じる』など昭和のもつ独特な空気感があります。

 そこで、前述した通り、今でも当時の空気感を感じられる純喫茶や銭湯、記念館等を訪ねて、リアルに体感することをおススメします。実際に体感することで昭和の何に対して『ノスタルジー(郷愁)を感じているか』が見えてくることでしょう。よって『昭和レトロ』をテーマにした販促施策を考えるうえで、昭和の雰囲気を可能な限り再現し、展示方法を工夫するなど『売場の作り方=商品の見せ方』が重要なポイントとなります。

 10代~30代の若い世代に『エモい』と感じてもらえるかどうか、実際に昭和の時代を生きたシニア層に対しては『本物』と受け取っていただけるかどうかが判断の基準となります。当時の食生活やファッション、暮らしなどを再現する際には、『エモさ×本物』を意識した売場演出を心掛けてください。

なぜ『今、この商品なのか』をPOP等でしっかり伝えることも重要となります。

 『売場演出の意図』と『その商品のわけ』を消費者にしっかりと伝えられれば、成功する販促施策に近づくでしょう。
他企業・他店との差別化を意識し、御社ならではの『昭和レトロ』を意識した販促施策を構築していってください。

 

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